緑内障手術
緑内障の手術とは?
緑内障の治療の目的は「眼圧を下げる」ことです。
「眼圧を下げる」ことのみが、緑内障の進行を防ぐ効果が唯一確認されている方法です。
緑内障についてはこちらをご参考ください
「眼圧を下げる」方法として「目薬」「レーザー手術」「手術」があります。
手術といった場合、眼に何らかの不可逆的な変化(手術前には戻せない変化)を加えるということを意味しています。
緑内障手術には、「レーザー手術」「手術(メスを使う手術)」があり、「レーザー手術」は、眼を切らずにレーザー照射によって眼圧をさげる手技、「手術」は眼にメスを入れて眼圧を下げる手技になります。
「レーザー手術」は眼を切らないため、術中の痛みや術後の見えにくさが軽いという良い点があります。
「手術」は大幅に眼圧を下げることができるという良い点があります。
どちらを選択するかは、生活スタイルや緑内障の状態を考慮して、患者さんと相談の上決めることになります。
緑内障の手術をしたらどうなる?
緑内障の治療の目的は「眼圧を下げる」ことです。すなわち、「視力視野改善ではない」というところに注目してください。
手術をすると眼が見えるようになると思いがちですが、緑内障手術は「視力視野改善のためではなく、視野視野の温存、延命のための手術」です。
すなわち、手術を受けることによって今現在の状態が変わって患者様がすぐに良かったと思えるような状態にはなりません。ですが、眼圧を適正化することでこれから10年後15年後経った時に、視力や視野が維持できて快適に過ごすせるようにするために行うものです。ただなかなか頭でわかっていても、いろんな期待をしてしまって手術を受けたからにはちょっとは見えるようになってほしいと思う気持ちもわかります。ある程度ご高齢で白内障手術を同時手術ができる場合は、同時手術をすると白内障手術による視力改善効果と緑内障手術による眼圧下降効果が得られて、患者様に満足していただきやすいと感じています。
日帰りで緑内障手術に対応
当院では、全例日帰りで緑内障手術を行います。
「レーザー手術」「手術」どちらも十分に麻酔を聞かせることでほぼ痛みを感じることなく手術をすることができます。手術後は眼圧が不安定になることがありますので、術後の診察回数は白内障の手術などの比べると多くなります。
術後の診察の過程で適切に眼圧の調整をしていくことで、将来的な眼圧の安定につながります。
レーザー治療(SLT)とは?
SLT(Selective Laser Trabeculoplasty):選択的線維柱帯形成術とは、眼内に蓄積した水(房水)を排出する出口(線維柱帯)に特殊なレーザーを照射することで眼圧を下げる治療です。
レーザー手術(SLT)は、ほぼ痛みなく5分程で終了するので、患者様の負担の少ない治療法として注目されています。繰り返し行うことも可能ですが、やや効果が減弱するともいわれています。すべての緑内障に適応があるのではなく、眼圧を下げる効果が中程度なので、緑内障初期の目薬があまり多くない患者様の初期の治療法として有効であるといえます。
目薬が目にあわない、目薬の副作用が気になる方で、レーザー治療の適応のある緑内障の型の初期の人にとって良い治療法になります。
白内障手術との同時手術について
白内障も緑内障も加齢により病気になる人が増える病気なので、緑内障手術と白内障手術と同時に行うことがあります。
白内障手術と緑内障手術を同時に行うことで、白内障手術による視力改善(見えやすくなる)と緑内障手術による眼圧の低減(目薬の本数が減り、患者負担が減る)という良い点が同時に得られるため、患者様のご負担の軽減され、手術した後の満足感につながりやすくなり、その後の治療に前向きに取り組んでもらえるよい点があります。
費用面でも白内障手術、緑内障手術を別々にするより、同時に手術した方が安くなる良い点もあります。
緑内障手術の種類
低侵襲緑内障手術(MIGS)
従来の緑内障手術は眼圧が大きく下げることができる反面、眼を大きく切開するため、感染症のリスクが高まったり、眼の強度が弱くなったり、術後の乱視による視力低下といった問題点がありました。
これらの問題点を少なくする低侵襲緑内障手術(MIGS Micro Invasive Gulaucoma Surgery)という概念が生まれました。
白目(強膜)を切開せずに眼内に蓄積した水(房水)を排出する出口(線維柱帯)にのみ切開を加えることで、眼の切開を最小限にとどめる手術方法です。目薬のみの麻酔(点眼麻酔)で施行可能で、手術時間も10分以内と短時間で施行可能です。
従来の手術に比べて眼圧を下げる効果は小さいですが、眼の強度を保ちつつ眼圧を下げることができます。
手術方法としては、線維柱帯切開術(眼内法)(トラベクロトミー)、水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術、隅角癒着解離術があります。線維柱帯切開術(眼内法)のときに使用する手術器具の違いでKahook、トラベクトーム、スーチャーロトームなどがあります。
MIGSの手術目的は、眼内の水(房水)が多すぎて眼の圧(眼圧)が上昇しているため、房水の排出口である隅角(その一部が線維柱帯)を切開して、房水を白眼の壁(強膜)の中に流れる血管へ流れ出やすくして眼圧を下げることです。
MIGSの良い点は、手術の身体的負担が、白内障手術とMIGSを同時手術をしてもそれぞれ単独で手術をするときと比べてもほとんど増えないので、少ない負担で1回の手術でより大きな効果を得られます。また前述したように眼を大きく切開しないので、術後の出血や感染のリスクが少ない上に眼の強度を保つことができて視機能の回復も速やかです。
MIGSの不十分な点としては、眼圧を下げる効果は点眼薬やレーザー治療よりも大きいですが、従来の緑内障手術(トラベクロトミー)には劣るので、視野異常がすすんでいてより大きく眼圧を下げる必要がある場合は適応になりません。
手術後の注意点
前房出血(1~2週間)が起こることがあります。
前房内の出血により一時的に視力が下がりますが、徐々に吸収されますので問題ありません。
眼圧が安定するまで、日数を要します。
⽬や⽬の周りを強くこすったり、押したりしないでください。
予想されるリスク・副作用
この手術を行うことにより、大変稀ですが、次のようなリスク・副作用が起こることがあります。
前房出血、眼圧上昇、浅前房、前房消失、テノン嚢胞、テノン嚢胞の線維化、角膜障害、濾過胞障害(濾過胞漏出、濾過胞被包、濾過胞線維化、濾過胞肉芽腫、濾過胞の感覚異常)、白内障、低眼圧、低眼圧による黄斑症、脈絡膜障害(脈絡膜滲出、脈絡膜出血、脈絡膜剥離)、結膜障害(結膜びらん)、眼痛、頭痛、視力低下、手術部位の瘢痕化、虹彩色素脱失、硝子体出血、眼内炎 など
線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
眼内の水(房水)が多すぎて眼の圧(眼圧)が上昇しているため、白眼の壁(強膜)を切開して房水を眼の外に排出する手術です。
眼の中と外をつなげる穴を白目の壁(強膜)に開けるので眼圧を下げる効果は非常に大きいですが、その分眼の強度が弱くなります。
また、眼の外に流れ出た房水が垂れ流しにならないように、開けた穴を白目(結膜)でカバーします。
これらの一連の過程で大切なことは、人間の体は傷を作ると傷が閉じようとする力が働くのでそれに逆らって穴を開けたままにする必要があります。そのためにマイトマイシンCを創部に塗布して、細胞の増殖を抑えて傷口が閉じないようにします。術後も創部は衝撃や感染に弱いので日常生活に注意が必要です。
手術後の注意点
- 眼圧が安定するまで、約2週間~1ヶ月を要します。眼圧を適正にするためには術後2週間以内の眼圧管理が非常に重要になるので、術後2週間以内は診察頻度が多くなり(1,2日に1回)、必要に応じて処置(レーザー照射や眼内の処置)を適宜していく必要があります。
- 術後1ヶ月程度は一時的に見えにくさは強くなります。術後1ヶ月程度で90%以上は元通りの見え方に回復しますが、一部で視力が不十分な回復のままの人もいます。
- 手術した部位は衝撃や怪我に弱くなるので感染症や眼球破裂のリスクが高まります。日常生活では眼を不潔な状態に暴露したり、衝撃を与えないように注意が必要です。
予想されるリスク・副作用
この手術を行うことにより、大変稀ですが、次のようなリスク・副作用が起こることがあります。
前房出血、眼圧上昇、浅前房、前房消失、テノン嚢胞、テノン嚢胞の線維化、角膜障害、濾過胞障害(濾過胞漏出、濾過胞被包、濾過胞線維化、濾過胞肉芽腫、濾過胞の感覚異常)、白内障、低眼圧、低眼圧による黄斑症、脈絡膜障害(脈絡膜滲出、脈絡膜出血、脈絡膜剥離)、結膜障害(結膜びらん)、眼痛、頭痛、視力低下、手術部位の瘢痕化、虹彩色素脱失、硝子体出血、眼内炎 など
緑内障手術の費用
手術内容 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|
流出路再建術(眼内法)(トラベクロトミー) | 15,000円 | 30,000円 | 45,000円 |
濾過手術(トラベクレクトミー) | 25,000円 | 50,000円 | 75,000円 |
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
---|---|---|---|
短期滞在手術等基本料Ⅰ | 2,720円 | 5,440円 | 8,160円 |
※生命保険等に加入されている方は、手術に対する給付金が支払われます。加入されている方は、各生命保険会社へお問い合わせ下さい。
緑内障手術の流れ (受診~手術後の診察)
1緑内障手術前の検査
初診はいつでも受け付けますが、術前検査は予約制になっております。
詳しい検査を行いますので、1時間半程度要します。
瞳を開く(散瞳)検査を行いますので、お車を運転してのご来院はお控えください。
手術前検査の内容はこちらをご覧ください。
2点眼麻酔・笑気麻酔
麻酔は目薬をさす要領(点眼麻酔)と同じものと、注射の麻酔を使用する場合があります。
手術時間の長さで変わります。
3切開
房水の流れが悪い部分を切開します。痛みは感じません。
4房水の流れを良くする
切除や切開によって房水の流れを良くしたり、新しく房水の流れる通路を作ることで、眼圧を下げます。
5緑内障手術終了
当院では入院は不要です。手術後10~15分で帰宅できます。
手術が終わったら翌日から眼帯なしで普段の生活ができます。
洗顔、洗髪、化粧は医師の許可があれば、通常7日~10日目以降で可能です。
車の運転は目が見えにくい場合がありますので、医師にご相談ください。
6緑内障手術後の診察
長期的な管理が必要で、数年後には追加手術になる場合もあります。
こわい病気だと思われていますが、定期的に検査を受けて、早目に必要な処置を受ければ予防できます。
緑内障を放置すると失明に至る上、治療に成功しても現状を維持することにとどまるので、当院では早期発見・早期治療に力をいれています。
緑内障手術Q&A
部分入れ歯か、総入れ歯かなど状態によって判断が変わりますので、事前に医師にご相談ください。
手術は仰向けに寝た状態で行うため、手術中に入れ歯が取れてしまった場合窒息する可能性もございます。
「入れ歯を外して手術を受ける」と決めた場合は、手術直前に外していただけますのでつけたまま保管ケースをかばんに入れてお越しください。
手術中に消毒液などがかかってしまう可能性があるため、手術直前に外すことをおすすめしています。
ただ「聞こえないと不安だな……」「手術中に医師の指示が聞こえなかったらどうしよう?」とご不安な場合は、医師と相談したうえで手術しない目の方のみつけていただくことも可能です。
手術前の検査の時に、医師にご相談ください。
当日は眼鏡をかけてお越しいただき、手術が終わってからコンタクトレンズを付けていただくことをおすすめしています。
手術中はコンタクトレンズを付けた目がゴロゴロしてきても、外したり目薬をさすことができません。
そのため、手術直前まで眼鏡をかけてお過ごしいただき、手術終了後お帰りの前にコンタクトレンズをつけていただくのがおすすめです。
糖尿病や高血圧、循環器系のご病気などで普段から飲んでいるお薬があれば、手術前の検査の時にお薬手帳を医師や看護師にお見せください。
自己判断で「今日は手術だから、飲むのをやめておこう」と控えるのは、かえってお体に負担がかかる場合もあります。
服薬していいかどうか、必ず医師や看護師に確認してくださいね。
手術翌日は、必ず朝一番に診察へお越しください。
手術直後から1週間ほどは、合併症になる可能性が最も高い期間です。
合併症を引き起こしてしまうと、視力の低下や再手術などに繋がります。
当院では手術後の定期検診として、手術後翌日朝一番、3日後、1週間後、2週間後、1か月後、2か月後、3か月後に検査・診察にお越しいただいています。
※上記日程は目安となります。目の状態によって、受診していただく頻度が変わることがあります。
医師の指示に従い、必ず検査・診察を受けましょう
あります。緑内障の病気の進行スピードによって、眼圧の上昇がすぐに起こる人と、手術後眼圧コントロールが長期にわたって良好な人に別れます。
点眼薬で眼圧がコントロールできない場合には、再手術が必要になることもあります。
緑内障の進行を改善に止めたり、治癒したりといったことはできません。
緑内障の治療では、手術を含め、眼圧を下げ、できるだけ緑内障を進行させないことを目的としています。
それだけに、早期発見・早期治療が大切になります。
点眼による麻酔をかけますので、麻酔も、手術そのものも、痛みはありません。
100%ではありませんが、ほとんどのケースにおいて、眼圧は低減できます。
点眼薬の量を減らしたり、中止したりといったことも期待できます。
よく「眼を使わない方がいいですか?」というご質問をいただきますが、眼を使うことで緑内障が進行することはありません。
とはいえ、眼を酷使すると視力低下や眼精疲労などの原因となりえますので、注意が必要です。
食事や運動も、今までどおりで問題ありません。
喫煙は緑内障や白内障の原因になることがあります。身体のためにも、禁煙しましょう。
手術治療も、点眼治療同様に、進行を遅らせ、視野が狭くなるスピードをゆっくりにするしかできません。
失った視野を取り戻したり、緑内障の管理から解放されるものではありません。点眼治療を適切に続けてもなお、病気が進行する場合に行われます。
ただし、手術により、点眼数を減らせるケースも多く見られます。
一度緑内障になると「治る」ことはありません。点眼治療は、病気の進行を食い止めるために続けて行くものです。しかし、多くの患者さんは、この点眼治療を続けることで、健常な方と同じような生活を送っていらっしゃいます。