コラム COLUMN
血管新生緑内障って何? 糖尿病で視力を失わないために③
2023.06.24
スタッフ
こんにちは! おおうら眼科 スタッフのもーりーです。
前回のコラム【糖尿病で視力を失わないために②】お読みいただけましたか?
前回は、ものが歪んで見えたり一部分が見えなくなったりする『糖尿病黄斑浮腫』についてご説明いたしました!
今回は、見える範囲が欠ける『血管新生緑内障』についてご説明いたします。
糖尿病で視力を失う原因② 血管新生緑内障
まず【緑内障】とは、網膜にある神経が傷み、すり減って視野(見える範囲)が欠ける病気のことです。
糖尿病になると、徐々に血管が傷ついたり詰まったりします。
人間の体は血液によって全身に酸素を送っていますが、眼球の中の血管はとても細いので、詰まったりするとその部分に酸素が届かず酸欠状態になります。
そうすると眼球は「酸素足りなーい! 酸素ほしいから他のところに新しく血管作ろー!」と【VEGF】という物質を増やして、血管がなかったところに新しい血管(新生血管といいます)を作ってしまいます。
この新生血管は正常な血管とは全く異なり、血管自体が非常にもろくて出血しやすく、また出血すると他の組織に癒着してしまいます。
次に、眼の中にある前房(ぜんぼう)では、酸素などを運ぶ房水(ぼうすい)という水が循環しており、房水が滞りなく流れていると眼球内の圧力(眼圧といいます)は一定に保たれます。
ここで、先ほど出てきた【VEGF】という物質がカギを握ります!
【VEGF】は水に溶ける性質があるので、房水と一緒に前房へ流れていきます。
そこで【VEGF】が作用して新生血管が作られると……
房水の出口が詰まって、房水がうまく流れなくなり眼圧が高くなります!!
眼圧が高くなると、網膜の神経が傷んで徐々にすり減っていってしまい、視野(見える範囲)が欠けていってしまいます。
赤い矢印でさしている、房水の出口が新生血管などにより詰まると、眼球内の圧力が変わります(眼圧が高くなります)!
今までご説明した、糖尿病により作られた新生血管で房水の出口が詰まって、眼圧が上がってしまう緑内障が【血管新生緑内障】です。
血管新生緑内障の治療法
血管新生緑内障の治療法は、抗VEGF薬治療とレーザー光凝固術と緑内障手術です。
抗VEGF薬治療は前回のコラムで説明しておりますので、今回はレーザー光凝固術と緑内障手術について説明いたします!
まずレーザー光凝固術ですが、これは網膜にレーザーを照射して新生血管が新たに作られるのを防いだり、すでに作られている新生血管から出血するなどの悪化を防ぐ治療法です。
レーザーの照射自体は外来診療で1回15分から30分ほどで行うことができます。
治療当日の流れは①検査・診察 ②麻酔の目薬を点眼する ③機械で目にレーザーを当てていく というものです。
視力がまだそれほど落ちていない段階で行うと失明の予防につながる一方、目の状態によってはレーザーを何度も照射しないといけないこと、治療費が高額で3割負担の患者様で総額4万5000円~5万円前後かかる、痛みとまぶしさを伴うというデメリットがあります。
次に緑内障手術ですが、こちらは白目の一部など目の中を切って、房水が滞りなく流れるようにする治療法です。
目の状態によって切る場所が変わりますので、手術時間は1時間程度かかります。
時間がかかる手術ではありますが、当院では入院せず日帰りで行うことが可能で、治療費は3割負担の患者様で8万円程度となります。
緑内障手術についてより詳しく知りたい場合は、当院HPの【緑内障手術について】を一度ご覧ください。
「緑内障って言えば、目薬で治療するんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、一般的な緑内障は点眼で眼圧が下がることが多いものの、血管新生緑内障の場合は下がりませんので外科的治療が必要となります。
そして、緑内障全般に共通することですが、緑内障の治療は視野と視力を少しでも残して失明しないよう予防する・もしくは残っている視野・視力を延命するためのもので、視力を回復させることはできません。
まずは血糖値のコントロールをしっかりと行い、糖尿病網膜症を進行させないことと、定期的に眼科で検査を受けることが一番大切です!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
次回は硝子体出血と網膜剥離についてご説明いたします。
お楽しみに☆